愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
いつもなら私が宣利さんにキスされている現場を目撃しようものなら、「キャー、ラブラブね!」などと乙女さながら大騒ぎのはずなのに、心ここにあらずといった感じだ。

「綺麗だしよく似合ってるけど、このドレスで会場を歩くのはちょっと難しいかな……」

「……そうでした」

残念そうに宣利さんに指摘され、気づく。
会場になるオーベルジュは会員制のレストランだ。
今回は宣利さんのお願いで特別に、レストランウェディングをおこなわせてくれる。
レストラン、なので通路が特別広いわけではない。
このAラインでトレーンの長いドレスでは動くのに不自由しそうだ。

「……別のにします」

断腸の思いでほかのドレスを選ぶ。
結局、会場での動きやすさも考慮して、スリムAラインのドレスに決まった。

「あのドレス、よかったんですけどね……」

採寸やデザインの打ち合わせをしながら、まだ諦めきれずにため息が出る。

「うん。
あのドレス、本当によく似合ってた。
……そうだ」

なにかを思いついたのか、ぱっと宣利さんの顔が上がる。

「あのドレスで写真だけ、撮るのはどうだろう?」

それはとてもいいアイディアだ。

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