愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
『私はVIPのために料理を出してるわけじゃないって、痺れるね』

そう言って宣利さんは嬉しそうだった。
しかし説得されて出店を決意。
味はもちろん、相手がVIPなので会社の状態や素行まで調査された。
審査は見事に合格、味もだが特に慈善活動が高く評されたと聞いていた。

「どういうこと、なんでしょう?」

「僕も初耳だ。
断るなら断るで、推薦者である僕にひと言あっていいはずなんだが」

盛んに宣利さんは首を捻っている。
それほどまでにこれは、突然降って湧いた話なのだ。

「なにか心当たり……たとえば、社員の不祥事とかあった?」

ううんと、母が首を振る。

「本当になにがなんだかわからなのいよ」

じゃあ、なんで?
なんで突然、出店取りやめなんて事態になっているのだろう。

「お義母さん。
僕にこの話、預けてくれませんか。
少し、調べてみます」

「そんな!
宣利さんの手を煩わせるようなこと……!」

すっかり恐縮しきっている母の手を、彼は取った。

「大事な家族のことです。
僕に任せてください」

元気づけるように母の手を宣利さんが軽く叩く。

「……じゃ、じゃあ。
お願いします」

頭を下げる母は小さく見えて、悲しくなった。
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