愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
これは今まで、そんな彼女を正してこなかった周囲の罪でもあるのだ。

「何度、痛い目を見ても懲りないなんて、あなたには学習能力がないんですか」

宣利さんは呆れているようだが、そうじゃない、そうじゃないのだ。
ぎゅっと彼の手を掴み、注意をこちらに向けさせる。
目で彼女と話をさせてくれと訴えた。
少しのあいだ見つめあったあと、彼が小さく頷く。

「典子さん」

彼女と向き合ったものの、それでも恐怖は拭えない。
震える私の手を、宣利さんが握ってくれた。

「もう、嫌がらせはやめてください。
こんなことをしたって、あなたの好きなようにはできないんですよ」

頭は酸欠になったかのようにくらくらする。
心臓がこれ以上ないほど速く鼓動していた。

「脅して言うことを聞かせたところで、一時的なものです。
それどころか、ますますあなたを孤独に追い込みます。
もう、やめましょう?
こんなこと」

精一杯の気持ちで彼女に微笑みかける。
友人という人たちは利害だけのうわべの付き合いに見えた。
母方の祖父母も両親も甘やかせるだけで、彼女の過ちを正さない。
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