愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
だから第三者の目で典子さんを分析できた。
そういう部分はあるはずだ。

「外の人間じゃない、僕たちは夫婦だろ」

「そう、ですね」

不服そうな彼に苦笑いする。
夫婦だけれど、子供がいなかったら赤の他人だ。
今は好きだ、愛しているという気持ちはあっても、子供がいなくなったら彼の気持ちも変わるかもしれない。

「でも、花琳が姉さんに救いの手を差し出すとは思わなかったよ」

宣利さんは感心しているが、それはそんな高尚なものではない。
ただの安い同情だ。

「失敗してしまいましたけどね」

「ううん。
きっと姉さんの心に届いているよ。
ありがとう」

感謝を伝えるように彼が、私の手を握ってくれる。
それで私が救われた。

「僕も頭ごなしに姉さんを怒らず、もっと気持ちを考えるようにするよ。
こんなきっかけをくれた花琳には、感謝しかないよ」

きゅっと私の手を握る彼の手に力が入る。
これから少しずつでいい、典子さんを巡る環境が変わったらいい。
そう、願った。
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