愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
「楽しみだな、子供。
性別もわかったし、そろそろいろいろ買い揃えてもいいよな」

後ろから抱き締め、宣利さんが私のお腹を撫でる。
もうお腹の膨らみもはっきりとわかり、胎動も感じるようになっていた。

「そうですね。
でも、買いすぎは厳禁ですよ」

「わかってる」

宣利さんは笑っているが、本当にわかっているのかは疑わしい。
いつのまにか彼が買ってくれた服で溢れ出した、私の部屋のウォークインクローゼットを見れば。



その日は夫婦揃って、父の店のレセプションに招待されていた。

「素敵なお店だね」

宣利さんに褒められ、嬉しくなる。
黒と紺を基調にした内装は落ち着きがあり、ゆったりと食事ができそうだ。

VIP専用のレストランなのでもちろん招待客のほとんどがVIPだし、取材で入っているプレスもそういう方向けのところだ。
招待客リストをツインタワー運営に提出し、チェックがあったと父は言っていた。

「本日は当店にお越しいただき……」

そんな人たちを前にしているからか、挨拶をする父は緊張しているように見えた。
それに、この店の成功が会社のこれからにかかっているとなると仕方ないかもしれない。

< 170 / 194 >

この作品をシェア

pagetop