愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
挨拶が終わり、料理が出てきはじめる。
今日は着席式なのでスタッフがお皿を運ぶ。
父の店は創作フレンチなので、アミューズから始まる。

「アミューズは……」

お皿の上にはサーモンや毛ガニといった食材をメインにした料理が、彩りよく三品ほどのっている。

「美味しそうだね」

宣利さんの言葉に、頷いた。
周囲ではシャッターを切る音もする。
ナイフとフォークを握り食べ始めたが、どんな評価がされるのか気になって味がいまいちわからない。

コースは順調に進んでいく。
よほどシミュレーションを重ねたのかスタッフの対応もしっかりしていて、これならグランドオープンしても安心そうだ。

「……綺麗」

「……美味しい」

時折、そんな声が聞こえてきて、胸を撫で下ろす。

メインは弟自慢の、宮崎牛のローストだった。
この店のために、特にいい牛を探したらしい。
心配なのか、駆けつけた弟が厨房からこちらをうかがっているのが見えた。

運ばれてきた料理を、ひとくち食べる。
それだけでなんというか、こう……開眼した。
いや、実際、思いっきり目を見開いていたし。
顔を上げると宣利さんと目があった。
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