愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
なにか言いたいが言葉が出てこず、お皿と彼のあいだに視線を往復させる。
彼も私と似たようなものなのか、黙ってうんうんと激しく頷いた。
味付けは塩だけのようだが、驚くほど肉の甘みが口の中に広がりそれがいいアクセントになる。
この肉に塩以外の味付けはもはや冒涜ではないかと思うほど、肉の旨味が凄い。

視界の隅で弟が盛大にガッツポーズしているのが見えた。
周りを見渡せばしみじみと肉の旨味を味わっているか、手が止まらないとばかりにぱくぱく食べているかがほとんどだった。
しかも、大多数が食べ終わって、名残惜しそうにため息を漏らしている。

「これは参ったね」

感心するように宣利さんが漏らし、我がことのように嬉しくなっていた。

素晴らしいデザートまで堪能し、レセプションが終わる。

「素晴らしかった」

「ファミレス経営の会社と聞いていたから侮っていたけど、これほどとは」

帰っていく人々の言葉を聞きながら、鼻高々になった。

「お父さん」

「花琳、どうだった?」

これほどの好印象を人々に与えておきながら、父はまだ心配そうだ。

「最高だったよ。
全部、美味しかった。
特にあの、お肉!」

< 172 / 194 >

この作品をシェア

pagetop