愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
じっと私を見つめる瞳は、欲に濡れて光っていた。
彼の手が頬に触れ、ゆっくりと傾きながら顔が近づいてくる。
触れた唇はなかなか離れない。

「愛してる」

ようやく顔を離した彼は、どこまでも甘い声で囁いた。
おかげでばふっ!と顔から火を噴く。

「えっ、あっ、えっ」

処理しきれずにわたわた慌てる私を、宣利さんはおかしそうに笑っている。

「花琳っていつまで経っても、こういうのに全然慣れないよね。
なんかそういうの可愛くて、ついからかいたくなる」

「あう。
意地悪です……」

そうか、ああいう恥ずかしいのは私の反応が面白いから、わざとにやっていたのか。
宣利さんは本当に、意地悪だ。

「でも、花琳が可愛いから僕もつい、そういうことしちゃうんだよね」

ちゅっと彼はさらに口付けを落としてきたが、それってもしかして、ほとんど素でやっているってことですか……?
お、恐ろしい人。

「花琳、いい?」

ノックの音とともに受付をお願いしていた友人の声が聞こえてきて、慌てて何事もないかのように装う。

「うん、いいよ」

入ってきた彼女は、完全に困惑しているように見えた。

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