愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
「赤ちゃん!
赤ちゃん、は!」

「大丈夫、大丈夫だ。
また出血するから、おとなしくしろ」

取り乱す彼女をベッドに押さえつける。
今、暴れてはようやく止まった出血がまた始まりかねない。

「私たちの赤ちゃん……」

さめざめと、酷く悲しそうに花琳が泣き出す。
その姿に本当に裂けたんじゃないかと思うほど胸が痛んだ。

「心配しなくても子供は無事だ」

「ほんとに……?」

それでもまだ、不安そうに瞳を揺らし、彼女は僕を見上げた。

「ああ。
むしろ花琳より元気なくらいだ。
だから、安心していい」

彼女の手を取り、力強く頷いてみせる。

「よかっ、た……」

すーっと声は、そのまま消えていった。

「花琳?
花琳!」

悪い予感がして、慌てて声をかける。
ナースコールのボタンを握ったが、すぐに先ほどまでとは違い、気持ちよさそうに寝息を立てているのに気づいた。

「もう、びっくりさせるなよ」

気が抜けて、倒れ込むように椅子に腰掛けた。
眠る彼女は僅かだが、顔色がよくなった気がする。
子供の無事を聞いて、安心したからだろう。

「……許さない」

眠る花琳を見守りながら、仄暗い復讐心が燃え上がる。
花琳を、こんな目に遭わせた姉さんを。
花琳の心を、踏みにじった姉さんを。
僕は絶対に、許さない――。
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