愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
内心は不安しかないけれど、できるだけ安心させるように笑って答えた。

「ありがとう、花琳」

ちゅっと軽く、感謝を伝えるように額へ彼が口付けを落とす。
本当は典子さんのところで嫁教育を受けるなんて嫌だ。
けれど今までの会話で宣利さんが私を凄く守ってくれようとしているのはわかった。
だったら、彼が両親の顔を立てるために苦渋の決断をしたように、私も彼の顔を立てるために承知しよう。

「じゃあ、決まりね。
また追って連絡するわ」

自分の要望が通り、典子さんは満足げな顔で帰っていった。
面倒なことになったとは思うが、仕方ない。
でも私はまだ、知らなかったのだ。
これが地獄の始まりだって。
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