愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
不思議そうに彼がレンズの向こうで瞬きし、自分が彼を凝視していたのに気づいた。

「……いえ、なんでもないです」

笑って誤魔化し、お皿を受け取る。
料理ができたなんて意外すぎる。
ひとくち食べたそれは、お出汁が優しく身体に染みた。

「初めて作ったんだが、どうだろう?」

「え?」

レンゲに掬ったそれを、まじまじと見つめる。
初めてだと言われなければわからないくらい、美味しい。
でもまあ、おじやなんて出汁さえちゃんとできれば、あとはご飯入れて玉子を流し込むだけだから、失敗はほぼないともいえるが。

「美味しいです」

「よかった」

本当に嬉しそうに宣利さんが笑う。
おかげで胸がきゅんと甘い音を立てた。

「そうだ。
明日、念のために病院へ行こう。
予約を入れておいた」

なにが楽しいのかベッドサイドにスツールを持ってきて座り、宣利さんは私が食べるのをにこにこ笑って見ている。

「えっ、いいですよ!」

もう治まったし、大袈裟だと思う。

「そりゃこのあいだ、すぐに治まるんなら気にしないでいいとは言われたよ?
でもそれは昨日、花琳が無理したからだろ。
なんかあったら心配。
だから念のために診てもらうに越したことはないだろ」
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