愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
「そういう花琳はとても可愛いけど」

あやすように彼が、額に口付けを落としてくる。

「僕にとって花琳は大事な人だからね。
絶対に失いたくないんだ。
だからそういうときは全部放り出してさっさと逃げてきて」

ぎゅっと私の手を握った彼の手に力が入った。
私を失ったときを想像しているのか、苦しげに歪む彼の顔を見ていたら、私まで苦しくなってくる。

「姉さんや周囲からの非難は全部、僕が受けるよ。
花琳はただ、自分と、お腹の子の健康を一番に考えて。
わかった?」

じっと私を見つめる、レンズの向こうの瞳は濡れていた。

「……はい」

その瞳を見つめたまま、頷く。
宣利さんはこんなにも私を気遣ってくれている。
でもきっとこれは、お腹の子が跡取りとして大事だからだよね?
でも、私を想ってくれているんじゃないかと勘違いしそうになる……。

「今回の件は姉さんにまた、僕から抗議しておくよ。
それで聞くかわからないけどね」

困ったように宣利さんは笑った。
それは今までがそうなだけに、なんともいえない。

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