涙空
・春の破片






 始業式は、校長先生の、雑談とも言える挨拶で始まった。





 二十分も経った後、自由に校舎内を見学する時間が与えられた。





 何しろ、日本国内最大の私立中学。広さは東京ドーム五つ分。





 グラウンドを入れたり、なんだかんだで七つ分だった。





 全校生徒数は、千百人。学年のクラスは十クラス。





 祖父と祖母にそんな大きな学校に入学できるお金があった事に





 腰を抜かした。






「年寄りを甘く見てはならんぞ! 護」






 祖父は笑いながら言った。






 全ての設備が充実していて、学生達の理想が詰まった場所だった。






 しかし、心は、空洞が閉ざせないままだった。






 あの日の人は、どうしてるんだろうか? たまに思う。






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