涙空
「今日は見えるかもな」






 ニュースで、流星群が出ると報道していた。






 本と天体望遠鏡を持ち、近くの河川敷へ来た。






「そういえば」






 昔、両親と星を見に行った。あの時は、川の字になって原っぱに寝転び






 綺麗な星を、温かな家族に囲まれ見上げていた。






 戻れない日々に、何度夢みただろうか。






 父は天文学の学者を目指し、母はパン屋を営業していた。






 父の天文学の夢を、幼き頃の自分は誇りに思い、夢みていた。






 毎日、毎日。小学生の自分は空ばかり見ていた。






 見えないものが、見えそうな気がしたから。






 そうだ。今でも。見えないものを、心の望遠鏡で






 見えるはずもないもの。届くはずのない願いを  手探りで探している。
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