涙空
~過去~




 両親が亡くなって、一カ月の時が流れた。





 ただ無常に過ぎて行った時は、まるで何もなかったかのように






 静かに、流れていった。






 呼吸をする度に、音もなくきしむ心。声にならない声が






 振り続ける雨の中を 駆け抜けていた。






 告別式の日も、雨だった。






 傘を差さずに、ただ雨の中立ち尽くしていた。






 黒い空は、心に大きな穴を開け、冷たく耳元であざ笑った。






 霊柩車という黒い車に運ばれていく、両親の遺体。






 苦しみは涙に変わる前に、雨に流されていた。






 空洞は、日々埋まることなく、日々は過ぎて行った。






 
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