涙空
 怒りは、殺意に変わった。






「速く行かないと、間に合わないかもよ~」






 睨み付けて、その場から焼却炉のある裏庭まで全速力で走った。






 遠くから見える焼却炉。残り百メートル位の距離で、男が本を焼却炉に入れる。






 男はその場から立ち去り、教室へ向かった。






 焼却炉の前。熱気があふれていた。






 迷わず蓋を開け、数秒の間手を突っ込み、本をとりだし、火を消した。







「死ね」






 背中に衝撃を覚えた。何かが刺さったようだ。







「きもちわりぃ。 同じ場所で空気吸ってると、吐き気がする」






 転校が決まっていた。祖母はきっと、このことを知って、東京へ越すことになった。






「これで、憂さ晴らしは終了。 楽しかった~」
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