そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
第一話
春うらら。
新入社員のスーツが、まだ就活の時と同じものを着ている頃。
『あの子にするか』
そんな適当なセリフと共に私の運命の輪は回り始めたのだった。
◇
「吉永さん、社長がお呼びです」
突然掛けられた声に振り向くと、そこには社長秘書の間宮さんが腕を組み冷たい視線と共に立っていた。
「えっ?お間違えではないですか?」
そもそも私は事務方の平社員。社長に呼び出されるはず無いのだ。
社長と面識があるわけでもないし、こっちは良く知っていても、向こうは絶対に知っているはずがない。
きっと、部長と間違えたのだろう。
私の上司である飯倉冬子部長はやり手のキャリアウーマン。
おそらく重役会議なども出席しているから、彼女は社長と面識があるはずだった。
「あなたは吉永美里さんですよね。社長がお呼びです」
ええっ!?
何故?
しかもフルネーム。
間宮さんの表情は相変わらず冷たい。
ど、どうしよう。平社員が社長に呼ばれるなんて、会社に対する功労者でもない限り、いいことなんてないもの。
頭の中は真っ白だ。
「早くしてくれませんか。私も社長も忙しいのですが」
「は、はい」
熱のない、ややイラついた声にやや恐怖を感じ、私はおずおずと立ち上がると、周りの視線が集中していることに気づく。
「吉永さん、何かやらかしたの?」
部長も考えることは同じのようで不安気だ。
けれど、何かやらかしたのであれば、まず部長に連絡が入るはずで、直接当人が呼ばれるはずはないと思う。
「記憶にないんですが…」
顔をこわばらせて間宮さんに視線を移すと、もう限界みたいな顔をしていた。
「何度も言わせないでくれませんか。早くしてください」
「は、はい。訳が分かりませんが、行ってきます」
部長に軽く会釈をすると、歩きだした間宮さんの背中を追ったのだった。
新入社員のスーツが、まだ就活の時と同じものを着ている頃。
『あの子にするか』
そんな適当なセリフと共に私の運命の輪は回り始めたのだった。
◇
「吉永さん、社長がお呼びです」
突然掛けられた声に振り向くと、そこには社長秘書の間宮さんが腕を組み冷たい視線と共に立っていた。
「えっ?お間違えではないですか?」
そもそも私は事務方の平社員。社長に呼び出されるはず無いのだ。
社長と面識があるわけでもないし、こっちは良く知っていても、向こうは絶対に知っているはずがない。
きっと、部長と間違えたのだろう。
私の上司である飯倉冬子部長はやり手のキャリアウーマン。
おそらく重役会議なども出席しているから、彼女は社長と面識があるはずだった。
「あなたは吉永美里さんですよね。社長がお呼びです」
ええっ!?
何故?
しかもフルネーム。
間宮さんの表情は相変わらず冷たい。
ど、どうしよう。平社員が社長に呼ばれるなんて、会社に対する功労者でもない限り、いいことなんてないもの。
頭の中は真っ白だ。
「早くしてくれませんか。私も社長も忙しいのですが」
「は、はい」
熱のない、ややイラついた声にやや恐怖を感じ、私はおずおずと立ち上がると、周りの視線が集中していることに気づく。
「吉永さん、何かやらかしたの?」
部長も考えることは同じのようで不安気だ。
けれど、何かやらかしたのであれば、まず部長に連絡が入るはずで、直接当人が呼ばれるはずはないと思う。
「記憶にないんですが…」
顔をこわばらせて間宮さんに視線を移すと、もう限界みたいな顔をしていた。
「何度も言わせないでくれませんか。早くしてください」
「は、はい。訳が分かりませんが、行ってきます」
部長に軽く会釈をすると、歩きだした間宮さんの背中を追ったのだった。
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