そんな簡単に彼女を決めていいんですか？ ～偶然から始まる運命の恋！？～

「いざ美里に告白しようと思ったんだけど、近づくチャンスが無かった。それで一計を案じたわけだけど…」
「そのこと、飯倉さんは知っていたんですか？」
「いや、冬子(とうこ)には話してない」

　じゃあ、あの時営業の男性が話しかけてきたのは偶然だったのね。

「ちなみに間宮さんは？」
「当然話すはずがない。だけどうちの親が結婚をせかしていいるのは知っていた。よく家に来ていたからね」

　外堀から埋めようとしていたのか。さすがだ。

「とにかく君を呼ぶには仕事中が一番いいし、まさか俺が呼びに行くわけにもいかないから、間宮に頼んだんだ」

　その際理由を聞かれて、とっさに答えたのが、まさかの社食で”うどん”を最初に頼んだ女性だった。その現場を涼介さんも間宮さんも見ていない。
　でまかせで言ったことが現実に。

「間宮にはいつのうどんを買った女性とは言っていないし、別に美里が本当にうどんを一番に買っていなくても良かったんだ。君と二人きりの時に適当に誤魔化せばよかったから」

　確かに、誰もその現場を見ている訳ではないし、二人きりなら何とでも言えた。

　ただ偶然、私と飯倉さんが一番にうどんを買ったから、それでちょっとだけややこしいことに。

　涼介さんが彼女を退室させたがっていたことも納得した。

「たかが平社員を呼び出すのに、随分大がかりなことをしたんですね」
「平社員だからだよ。急に社長が呼び出したらおかしいだろう？理由が必要だったんだ」

　これが事の真相。
　聞いてしまえば、何だ。なのだけれど、偶然に偶然が重なって、今更ながらとは言え、偶然が私たちを結びつけてくれたのだと思うと、やっぱり運命ってあるのだと思う。