そんな簡単に彼女を決めていいんですか？ ～偶然から始まる運命の恋！？～

　安いニットに、安い靴。ついでに鞄もノーブランドの合皮です。

　実際、重役さんの接待なんて逆立ちしても私には無理。
　緊張してとんでもないことをやらかしそう。だからそれが出来る間宮さんはすごいと思ってる。

　間宮さんと喧嘩をする気はないし、もし社長が私を彼女(仮)に選んだ理由を知っているのなら、余計に間宮さんの言うことはもっとだと思うし、社長夫人候補ナンバーワンのプライドが許さないだろう。

　私に嫌味のひとつも言いたくなる気持ちは分っているつもり。

「安い、高いの問題じゃないと思うわよ。吉永さんにそのニットすごく似合ってる」

　思いがけない飯倉さんの言葉に心の中で私は泣いた。

「そうですね。私、子供の頃からブランドの服しか着たことないから、吉永さんの着ている服は絶対似合わないでしょうね。着ようとも思わないけど」

　間宮さんはその長い髪をなびかせて、私たちに背を向けてその場を離れたのだった。

　その後ろ姿を見送りながら飯倉さんはため息をついた。

「いろんな人がいるから。気にしないほうがいいわよ」