そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
 飯倉さんと別れて、私は独りでべリが丘駅へと向かった。

 彼女がどこに住んでいるのか詳しくは知らないけれど、いつも徒歩。
 つまり、ノースエリアの豪邸に住んでいるのか、ツインタワーの左側の住居棟に住んでいるのか。
 それとも、最近ところどころに出来始めた中層の高級マンションに住んでいるのかも。

 いずれにしてもお金持ちのお嬢さまであることには違いない。
 
 思わずため息が漏れる。

 頭が良くて綺麗で性格のいいお嬢さま。

「最高じゃない」

 駅でモノレールを待つ間、心の声が思わず口から出てしまった。
 べリが丘を走るのは電車ではなくモノレールだ。

 閉まるドアに寄りかかりながら、東京の夜景を楽しむのが私のいつものパターン。
 モノレールは高い所を走っているから、景色を遮る建物が少なく毎日最高の景色を満喫できる。
 月が綺麗み見える夜は特に最高で、スカイツリーと満月がベストポジションの時があって、写真に収めて待ち受けにしているほど。

 天気のいい昼間は富士山が見えるし、遠くには東京タワーもヒルズのビル群も眺められる。

 音もなく静かに走るモノレールから乗り継ぎをして、四十分ほどで私の降りる駅に着く。
 ここは東京の端っこ。
 景色は──。
 少なくともデートには使えない。

 家々がひしめき合うように立ち並ぶ下町。車の通れない狭い路地を進み、袋小路の突き当り。黒い物体が時々出現する築五十年の古いアパートの錆びた階段を登り、一番奥が私の部屋だ。
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