そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
 コンコン。

 間を開けずにもう一度音がした。

 夜の九時を回っている。こんな時間に人が訪ねてくるなんて、今まで無かった。

 一気に心臓が嫌な音をたてて騒ぎ出す。

 ど、どうしよう。
 とっさに近くにあったクッションを抱きしめる。
 痴漢とか?
 誰かに後をつけられていたような気配は感じなかったけど。
 こんな夜に独り暮らしの女性の家に来るなんて非常識すぎ。

 ドンドン。

 ヒェーーーー!

 音が、音が大きくなってる。

 こ、怖いっ。

 ベッドの布団に頭を潜り込ませた時だった。

「美里ちゃんっ!帰ってるんでしょー!」

 あれ?

 聞き覚えのある声。

「お風呂に入っちゃったのーー?」

 隣のおばさんだ。

「い、今開けますっ!」

 大声で返すと慌てて玄関の鍵を回す。

「良かったよ、お風呂じゃなくて」
「あはは、すみません」

 アパートの隣の部屋に住む山田さんだった。
 お子さんが二人いるけれど、二人とも独立して今はご主人との二人暮らし。

「これ預かっててさ」

 山田さんの手には大きなバラの花束が握られていた。

「あんたのいい人かい?」
「えっ?」

 山田さんの言ってることがすぐには理解できず、沈黙してしまう。

「ほらっ」

 強引に花束を押し付けられてしまった。

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