そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
「ちょっと待って。だってこれ私に?」
「ああそうだよ。あんたが帰って来たら渡してくれって、超イケメンの人から預かったのよぉ」

 それってまさか。

「そのイケメンの人って、背は高かったですか?」
「ああ、すご~く高いよ。ウチの亭主が子供に見えるくらい」

 さすがにそれはオーバーだと思うけど。

「で、その人、髪は黒髪で…」

 私が言い終わらないうちに、山田さんが会話を引き継いだ。

「鼻筋が通って、前髪の間からちょとだけ見える切れ長の目でしょ」

 ……阿久津社長だ。

「あんな良い男、一目見たら忘れないよ」

 どうして?
 今日はホテルで接待の会食があるって。

「おばさん、その人いつ頃ここへ来たの?」

 どうやら私と別れてすぐここへ来たらしかった。

「あんたすごい彼氏見つけたじゃない。どうりで、いくらうちの息子たちを勧めても、「うん」って言わないわけだ」
「ち、違いますよっ。息子さんたちには彼女がいたじゃないですか」

 ため息をつくと山田さんは下を向く。

「あんたが彼女になってくれれば良かったのにね。あの子たちも今は薄情な彼女と一緒に住んで、親のことすっかり忘れてるわ」

 下の息子さんが家を出て半年。全然帰って来ないらしい。
 こっちから連絡するのもはばかれるらしく。

「きっと彼女との生活が楽しくて仕方ないんですね」
「息子なんてつまんないよ」
「お孫さんが生まれたら、にぎやかになりますって」
「どうだか。じゃあね。確かに渡したよ」

 山田さんが部屋に入るのを見送って私も部屋に戻る。

 
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