そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
「正直、涼介さんが選んだ女性があなたで良かったと思っているの」
「……」
「あなた知っているかしら?涼介さんの家がどれだけすごい家柄か」

 名前からして凄そうだとは思っていた。あとは噂で武家の先祖くらい。
 しかも公開されている経歴は生年月日、学歴、会社を立ち上げた経緯とこれまでの沿革。
 一般的なものだ。

「私は幼馴染だから知っているわ」

 彼女は延々と阿久津社長の話を始めたのだった。
 
「ね、分かったでしょ。田舎娘が嫁げる家ではないの」
「お話は充分分かりました。けれど、間宮さんは何か勘違いをされています」

 だって、私は彼女(仮)だもの。
 彼女にだってなっていない人間が、結婚相手に成り得るはずがない。
 
 間宮さんは彼女にはあり得ない程の大きな声で笑った。

「そうだったわね!うっかりしていたわぁ。あなた(仮)だったわねっ。それに──」

 そうして彼女は私みたいな女は三日ともたずに、呆れられて捨てられるだろうと宣言したのだった。
 私もそのつもり。彼女とは言え、一緒に出掛けたりする関係にはならないだろう。ご両親を安心させるだけの存在。
 まぁ、安心させる自信はないけれど。

「一応、涼介さんの顔を立てて少しの間我慢するけれど、次はこんなバカなこと彼にさせないわ。私が彼の彼女になってご両親を安心させればいいのだから」

 おっしゃる通りなんですが、なにせ社長が幼馴染は無理と言っていたので、おそらく違い女性が現れるとは思います。

「彼のご両親が一番納得するのは、この私だもの」

 言いたいことだけ言うと、間宮さんは仕事に戻って行ったのだった。
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