そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
「お待ちしておりました、吉永様」

 パリッとしたスーツを着た中年の男性に声を掛けられた。

 だ、誰?
 
 思わず二、三歩後ろへ引いた。

「驚かせてしまって申し訳ありません。私は阿久津社長の専属運転手をしております高津と申します」

 笑顔で挨拶されて。

「はぁ」

 と、間抜けに答える。

「阿久津社長がお待ちです。どうぞこちらへ」

 えっ?えっ?
 と思いながらも高津さんの後について行くと、オフィスビルの地下駐車場へと入り、一台の車の前で高津さんは止まる。

「どうぞ」

 そう言って後部座席のドアを開けてくれる。後部座席には阿久津社長が座っていた。

「遅くまで大変だったね。お疲れ」
「お疲れさまです」
「早く乗らないと、高津さんが扉を閉められないよ」
「あ、え、すみませんっ」

 誘導されるように阿久津社長の隣に座っていた。

「では出発しますね」

 運転席に座ると高津さんはサイドブレーキを静かに降ろし、ゆっくりと車は動きだした。

「あ、あの…」
「美里と一緒に食事をしようと思って」

 み、美里!?
 一緒に食事!?

 彼はクスクス笑う。

「彼女に吉永さんは変だよね?それに彼女を食事に誘うのは普通のことだよね?」

 それはそうですけど…。
 彼女じゃなくて、(仮)にそこまでする必要ありますか?

「私は社長のご両親を安心させるためだけの存在ですよね?」
「そうだね」
「つまり、社長とお会いするのは、ご両親にお会いする日で良くないですか?まさか今からご両親に会うわけではないですよね」
「君が言いたいことは良くわかった」

 
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