そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
 だけど──。
 と、阿久津社長は続ける。

「美里は両親を安心させるための存在だけど、すぐに会わせるとは言ってないよね?」

 はい?

「君が会うのはまだ先の話」
「分かりました。では車を降ろして下さい」

 社長のご両親と会うのはたった一日。その時だけ彼女の振りをする約束だ。
 今、一緒にいる必要はない。
 
 このあと楽しみにしているドラマの初回があるのだ。

「君は思い違いをしているみたいだね」

 うん?

「まさか、彼女のフリをするのは、親と会うときだけだと思ってた?」
「そのお約束でしたよね?」

 彼は肩を揺らして笑う。

「そんなわけないだろう。そんなんで、俺の親を騙せると思った?」

 思いました。
 ぽかんとする私に彼はさらに言う。

「これから俺の彼女らしく振舞えるように、君をちゃんと教育しないとね」

 背中がぞわぞわっとした。
 私の考えが甘かったことを、気づかされた瞬間だった。

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