そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
 頭の中は真っ白で何も考えられないし、慣れない空間に気持ちは落ち着かない。

「俺がいるから大丈夫」

 めちゃくちゃ気を使わせている。そう思うと余計に心拍数があがって尋常ではいられない。
 
 そうこうしている間にお酒が運ばれて来た。

「エメラルド・クーラーでございます」

 目の前に置かれたカクテルは、エメラルドと言うだけあって薄いグリーンに赤いサクランボが浮いている。

「阿久津様にはいつものギムレットでございます」
「ありがとう」

 彼がグラスに手をかける。

「美里も取って」

 言われるままにグラスを取る。
 緑の液体を通して彼がぼんやり揺れて見える。

「……乾杯」

 静かにグラスを合わせた。

 お酒が喉を通る感覚が、緊張で火照った体と心を冷やしてくれるようで心地よかった。

「……おいしい」
「気に入った?」
「はい。グリーンだからメロン味かと思ったらすごく爽やか」

 彼は笑う。

「メロン味か。面白いこと言うね」

 エメラルド・クーラーは、ドライジンがベースでレモンジュースで割りペパーミントを加えたものだそう。
 清涼感が口の中一杯に広がり、一口飲んだだけでさっぱりする。

 これって、緊張で口の中がカラカラな私の為に選んでくれたの?

「アルコールも控え目にしてもらったから、そんなに酔わないと思う」

 君がお酒に強いかどうか分からなかったから。
 
 そう彼は付け加えた。 

 
< 35 / 147 >

この作品をシェア

pagetop