そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
「この間はありがとう。涼介君のお陰で我が社の業績も登り調子だよ」
「それは良かったです。今後も何かありましたらお声かけください。この身を呈して社長の為に尽力いたします」

 宜しく頼むよ。近藤社長は笑う。

 近藤って。まさか、あの近藤エレクトリックの近藤社長!?
 年商五千億。私が契約書を作成した、あの?

 ガタガタと足が震えて来た。
 どうしよう。ここで失礼があったら大変なことになってしまう。
 こんな偉い人と対面はおろか、話たことだって無いのに。

「ちなみに、そちらの女性を紹介してもらえるかな」

 ひっ。
 視線が私に写った途端、全身が硬直してしまった。
 
「現在お付き合いさせて頂いております、吉永さんです」

 そっと彼が私の腰に手を当ててくれた。
 
 それは阿久津社長の気配りなのだろうけれど、緊張は既に最高潮に達している。
 意識が飛びそうなのを、なんとかこらえて口を動かす。
 それでも名前を言うのがやっとだった。
 
「よ、吉…永です」

 近藤社長は私のTPOをわきまえない服装を気にとめる様子はまるでなく。

「なかなか感じのいい女性だね。涼介君らしい」
「ありがとうございます」
「近いうちにパーティーでまた会えるね、吉永さん」

 笑顔でそう言ってくれたのだった。

「は、は、は…」
「はい。その時は、改めてご挨拶させて頂きます」

 代わりに社長が答えてくれたのだった。
< 38 / 147 >

この作品をシェア

pagetop