そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
 思わずクスっと笑ってしまう。

「阿久津社長、それって確か昔の映画の名台詞ですよね」
「気づいた?」
「分かりますよ。古い映画だから見たことはないけれど、そのセリフはわりと知られてますよね」
「そっ、カサブランカ。ちょっとクサいから恥ずかしいけど、どうやら美里の気持ち、少しほぐれたみたいだね」

 え?

「ここに来るまで、ずっと気を張っていただろう?」
「…確かに」

 いきなり車に乗せられて、着いたと思えば高級ホテル。案内されたラウンジバーはセレブばかりで、近藤社長の登場。

「俺のことも警戒していたし」
「だって。……すみません」
「おかしな話を持ち込んだのは俺だから、謝らないといけないのは俺のほうなんだ。それに美里に彼氏が長い間いなかったことも良く分かった」
「今さらそんなこと蒸し返さないで下さいっ」

 二十七にもなって彼氏がいないなんて、めちゃくちゃ恥ずかしいんだから。

「あの時の反応が面白かった。ウブで可愛かったよ」

 全身が火照ってしまう。
 恥ずかしくて両手で頬を押さえた。

「ほら、そんなとこが可愛い」

 彼はクスクス笑う。

「だから、君との接し方はもう少しゆっくりにする。酔わせて襲うとかしないし」

 阿久津社長はきっと女性経験豊富なのだろう。
 私の態度で見破ってしまうんだもの。

 だったら余計に”うどん”で選ばれたことが引っかかてしまう。

 きっと阿久津社長の周りには間宮さん以外にも、素敵な女性が沢山いるはずなのに。

 
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