そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
 驚いてどうしていいか戸惑う私に彼は笑う。

「いささか唐突すぎたかな」

 そりゃそうでしょ。
 私の上司飯倉さんだって、初対面で『ところであなた彼氏いる?』とは聞いてこなかったもの。
 ちなみに、飯倉さんは今年三十五歳、彼氏募集中のキャリアウーマンだ。

「あのぉ~、お答えするのは業務命令ですか?」

 社長はさらに笑った。

「いや決してそう言うわけではないのだが」

 御年三十二歳の阿久津涼介社長は、爽やかなイケメンとして社内のみならず、社外でも人気があるらしかった。若手のやり手社長として雑誌や、Webにもよく登場していたから、噂では某テレビ局の女子アナにロックオンされているとか。

「コーヒーをお持ちしました」

 トレイにカップを乗せて戻ってきた間宮さんは、社長の前にそれを置く。私に視線を移すと。

「吉永さんはミルクとお砂糖使いますか?」
「あ、いいえ私は普段からブラックで…」

 すぐに彼女は私の前にもカップを置いてくれた。
 そして一歩引いて、社長の横に立つ。
 その所作がいかにもスマートで、さすが秘書。と私は感心してしまう。

「どうぞ、飲んで」

 阿久津社長はコーヒーを勧めてくれたけれど、緊張して飲めたものではない。
 そんな私を気にすることもなく、彼はカップに口をつける。

「それで、さっきの続きなんだけど、答えたくなければ答えなくていい」
「はぁ…」

 じゃあなんで聞いたの?などと疑問が浮かぶのだけれど。

 すかさず間宮さんが入ってくる。

「私がいない間に何をお話ししていたんですか?」
「別にたいしたことじゃない」
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