そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
 飯倉さんは早速、土曜日に美容院を予約してくれた。

 涼介さんに話したら。

『美容院?俺は今のままでも好きだけど、せっかくだから行っておいで』

 背中を押してくれたのはいいのだけれど。

 私は今、美容院の前で固まっている。

 確かに路面店ではあるけれど、ガラス越しに中を覗けばどう見てもセレブばかり。外からでもお客さんたちの服装が高級であるのが見てとれる。

「入れるわけないじゃない。やっぱり帰ろう」

 踵を返した時だった。

「吉永様ですよね」

 店の女性から声を掛けられてしまった。

「飯倉様からうかがっております。どうぞお入り下さい」

 お入り下さいって、簡単に言うけれど。
 こっちとしては中々…勇気がいるもので。

 店内に入ると、やっぱり視線を集めてしまう。
 今日は少しだけ服も頑張ったのに、やっぱりダメかぁ。

「お母さま、あの人特別室みたいよ」
「あら、本当ね」

 そんな会話が聞こえてきた。
 特別室?

「私たちも、めったい入れないのに」
「そうよね。特別室は本当に上客しか入れないって聞いているのに。あの()がそんなすごい客には見えないけどねぇ」

 はは、おっしゃる通りです。
 きっと飯倉さんがすごいお客様なんです。
 
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