そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
 それにしても、上流社会と言うのは中々面倒くさいもののようですね。
 一般人を見下した物言いは、これが初めてじゃない。
 気にならないと言えば嘘になるけれど。

「こちらです」

 通された広い部屋には一人分の椅子と、鏡が置かれていた。
 内装はもちろん豪華。天井にはシャンデリア。

 私からしたら、ちょっとキラキラし過ぎている気もするけれど。

 椅子に座り大きくため息をついたら、案内してくれた女の子に笑われてしまった。

「緊張してます?」
「もちろん。だってここは場違いなんだもの」
「息つまりますよね。ここに来る人はみんなセレブだから」
 
 彼女はカットクロスを掛けてくれた。

「仕事してても、だいぶ気を使っちゃいます」

 案外ラフな子のようだ。

「ここに来れたもの飯倉さんのお陰なんだけど、私みたいな一般人は来ないでしょう?」
「う~んと、そうですね。基本それなりの方々が…」

 でも。と彼女は続ける。

「たまには普通の人も来ますよ。年一の記念日だからとか、おっしゃって。ウチのカットディレクター有名人だから」

 そんなことも私は知らなかった。

「じゃあ当然飯草さんもその、カットディレクターに切ってもらってるんだ」
「はい。二人は仲良しさんですもん」

 くだけた話し方でホッとする。
 セレブを相手にしている時はこんな喋り方しないのだろうけど。
 
「少々お待ち下さいね」
 
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