そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
「と、言いますと?」
「彼女も最初にここへ来た時、”様”づけをすごく嫌がるわけ。飯倉さんでいいですって。ここに来るセレブでは珍しいと思うよ。気取ったところが無いって言うか、むしろ特別扱いされるのを嫌がる感じ?」

 飯倉さんらしい。

「じゃあ、吉永さんは今の明るい髪色よりはダークグレージュの方がいいから、まずは染めちゃおっか。で、その後カットしようか」
「はい、お願いします」

 時間にして約二時間くらい。

「はーい、どうかな?」

 鏡に写る私はまるで別人のようだった。

「これが、私?」
「もちろん。整形したわけじゃないんだから」

 クスっと春山さんは笑う。

「もともと、可愛い顔立ちをしているし、フェミニンな感じがいいかな~って思ってね」

 毛先は遊ぶように軽くパーマがかかっている。

「この色初めてです」
「ブラウンも可愛いんだけど、ちょっと大人っぽくグレージュにしてみた。この色なら会社も問題ないでしょ?」
「はい。全然平気です。むしろこのほうが落ち着いて社会人ぽいかも」

 じゃあ、今までは何だったの?って話なんだけど。
 安っぽい大学生?

 すると、春山さんはケラケラ笑う。

「実際、安っぽい色ではあったかな。でも、その色が似合う人も沢山いるから難しいんだけど、吉永さんには合って無かった。ってことだね」

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