そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
 本当に場慣れしないところへ来ると、いくら涼介さんが隣にいるからと言っても緊張が半端ない。
 
「お連れさまのお好みはございますか?」

 お連れさまって私のことだよね。
 好み?
 服の好みを言えばいいのかな?

「えっと、自分になにが似合うのかさっぱり…」

 店員さんの表情が緩んだ気がした。

「彼女も僕と同じブラックで」
「かしこまりました」

 って、コーヒーの好みのこと?
 うわ、恥ずかしい。
 でも、お店に入っていきなり飲み物を出されるとか、知らないし。
 
 涼介さんの意地悪。
 こんなんだと、パーティーも不安になってくる。

「俺にとっては当たり前だったから、ごめん。これから気をつけるよ」

 彼もちょっと笑ってる。
 
 ひどいんだからっ。
 ぷっとむくれる。

「怒った顔も可愛いね」

 人差し指で、頬っぺたをつつかれた。

「お待たせいたしました」

 さっきの店員さんがコーヒーを運んできたのだった。

「うふふ、仲がおよろしいのですね」
「ええ、結婚する予定です」
「まぁ!お嬢さまはお幸せでいらっしゃいますわね」

 カップを置きながら店員さんは満面の笑みを作る。

「阿久津様が、女性をお連れになったのは初めてですから、もしやとは思っていましたけれど」

 け、け、結婚って。
 まだ決まっていないのに、そんなに堂々と言わないで。

 ご両親にだって会っていないんですよっ。
 反対されるかも知れないんですよ。

「ちょっと、涼介さん」
 
 小声で呟くも、彼は素知らぬ顔だ。

 

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