そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
「それではドレスをお持ちしますね」

 店員さんは再び姿を消す。

 これってどんなシステム?
 私の好みも聞かないで、ドレスを持ってくるとは?

「こういうお店はね、むやみに商品に触れちゃいけないことは知ってる?」

 どこかで聞いたことがある。その辺のお店みたいに勝手に触っちゃいけないって。

「さっきの彼女が、美里に似合いそうなドレスを選んでここに運んでくれるんだ」

 彼の言う通り、しばらくして店員さんがキャスターのついたハンガーラックを押して現れたのだった。
 そこには数枚のドレスが掛けられている。

「大変お待たせ致しました。どうぞご覧ください」

 するとすぐに涼介さんが。

「その白とピンクのドレスは美里に似合いそうだね」
「こちらでございますね」

 彼女はさっと取ると、いかがですか?と表裏を見せてくれた。

「いいと思う。春らしいし。美里はどう?」
「い、いいと思います」
「こちらも素敵ですよ」

 淡い桃色のレースのドレスを同じように見せてくれた。
 それ以外にも、彼女が選んだドレスはすべて春らしく、軽やかなものだった

 どれも私の好みで迷ってしまう。

「最初の二枚を着てみたら?」

 どうやら涼介さんは始めに見た二枚が気に入ったようだ。

「そう…ですね」

 どちらも試着をして涼介さんの前でお披露目すると。

「二枚とも頂きます」

 そう言ったのだった。

 こんな高価なドレスを、しかも二着も。
 信じられないって顔をしたら、彼は背中をポンポンと優しく叩いたのだった。

「ドレスは阿久津様のご自宅にお届けでよろしいですか?」
「それでお願いします」
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