情愛漂う財閥社長は、一途に不遇女子を寵愛する。
プロローグ
夜明けに近い午前四時、私の一日はこの時間から始まる。
朝起きて身支度をするとお屋敷の掃除を隅から隅までして、六時になれば皆の朝食を作らないといけない。
「おはようございます、優菜様」
「おはようございます、料理長……今日もありがとう。だけど、様はいらないのよ」
「いえ。私にとってのお嬢様は優菜様なのです。酒井のお嬢様は優美様のお子であるあなただけです」
ここ酒井家は、今も代々続いている由緒ある酒蔵。
その家に生まれた私、酒井優菜は直系で跡取りだ。
そんな私がなぜ、朝早くから働いているのかというと母が亡くなり、父が当主になって継母と結婚したのがきっかけだ。
継母は母の娘である私を毛嫌いしているし、父は義妹である愛湖を溺愛している。
私の母と父は政略結婚だった。父は好きだった女性と無理やり別れさせられて母と結婚させられた。
それなのに、当主になったのは直系の娘であった母で、ずっと母のことを嫌っていた。そんな母の唯一の子供で娘である私が嫌いなのだろう。
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