情愛漂う財閥社長は、一途に不遇女子を寵愛する。
「優菜さま、お久しぶりです」
「……料理長」
「元々は、私は藤沢の人間です。父は、酒井で働いていましたが私は藤沢家で料理人をしていたのですよ」
えっ?ど、どういうこと?
「私は、専門学校で調理師免許を取得した後に父と同じような人生ではなく沢山の人に幸せにできるレストランで就職を決めて最初はホテル唐橋でレストラン部門のメイン料理の料理人として働いていたんです。そのあと、旦那様にスカウトされたんです」
料理長の話は驚くことばかりだ。ずっと、ウチにいたわけじゃなかったんだ。
でも確かに、私が使用人のように働き出した時には彼の父が引退した後だったから知らないのも仕方ないか。
「藤沢家の料理人として働き出した時に、父が倒れて急死してタイミングよく旦那様に酒井家の嫡女で姫を見守ってほしいと言われて酒井家の料理人になったんだよ」
「そうだったんですか」
「うん。父からは、優美様のことを聞いていて聞いただけだけど優菜様のことは、旦那様に聞いていて知っていたしね」
そうなんだ。
でも、なんで八尋さんはそんなに私を気にかけてくれていたんだろう?昔からの付き合いだからって私を気にかけてくれる理由にはならないし、理由が思いつかない。
その後は、朝食を食べ終え部屋に戻った。
それから、今までとは真逆の生活が始まり移動する度に横抱きされ甘やかされた。