情愛漂う財閥社長は、一途に不遇女子を寵愛する。



「旦那様、優菜様。おはようございます」


 食堂に到着すると、この前も会った料理人見習いのユウキさんがカトラリーを並べていた。


「おはよう、ユウキさん。今日もありがとう」

「いえっ、わ、私はこれが仕事ですので! 配膳させていただきますっ」


 ユウキさんは深く礼をすると、厨房の方へ急ぎめに去っていってしまった。

 何か私が変なこと言っちゃったかなと思ったが、八尋さんは何もなかったように向かい側のイスに座ったので気にするのをやめた。


「優菜ちゃんがこの前和食が好きだって聞いて今日は和食にしてもらったよ」

「え、そうなんですか? 八尋さんはパンがお好きって言っていらっしゃったのに?」

「たしかにパン派だけど、和食も好きだよ」


 そう八尋さんが言うとユウキさんがやって来て配膳してくれる。

 テーブルには、白米に八丁味噌のお味噌汁。ほうれん草のお浸しに漬物、塩鮭にだし巻き卵が配膳されていった。



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