情愛漂う財閥社長は、一途に不遇女子を寵愛する。



「……自分(彼女)は死が近いことを悟ったのだろう。自分が死んだら、君を守ることはできない。だから、財閥家であるうちに後ろ盾を頼んだんだと思う」

「……っ……」

「実際、そうだっただろ? 彼は、酒井の家の者ではないのに自分のもののように振る舞っている。後妻は後妻で、彼が当主だと言っているからな」

「そう、ですね。だけど、諦めていたんです……彼らに酒井を継げられないのは分かってました。でも、私には頼りになる人もいなかった。お母様が大切に慈しみ守って来た家だから守りたかったけど……」

「それは、申し訳なかった。何度か八尋は君を妻にしようと言い迎えに行こうとしたのだが、僕が止めていたんだ」



 そう八尋さんのお父様が言えば、八尋さんも声を発する。

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