情愛漂う財閥社長は、一途に不遇女子を寵愛する。


  ***


 会場に到着すると、すでに招待客はたくさんいらっしゃって私たちの方をチラチラと男女共に見てくる。

 きっと八尋さんのような眉目秀麗なイケメンの男性の隣になんであんなちんちくりんな女がいるんだ!と思われているのだろう……分かってますよ。


「……八尋さんモテモテですね」

「そのセリフ、そのままお返しするよ。君は自分の可愛らしさに気付いてないから」


 八尋さんはいつものように甘い言葉を私に告げると「挨拶に行こうか」と微笑みながら言い、歩き出す。
 事前に教えてもらっていた会場にいる招待客一人一人に挨拶をして行く。


「こんばんは、藤沢社長」

「篠倉さん、この度は来てくださりありがとうございます」


 この篠倉さんというのは、代々藤沢家がお世話になっている政治家一家の方だったはず。
 今回は、現在の国会議員である篠倉羽澄さんとその娘さんが参加されている。

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