情愛漂う財閥社長は、一途に不遇女子を寵愛する。



「……君はただの一般人、それが真実だ。優菜は、前当主の酒井優美さんの一人娘であり嫡子。優美さんが亡くなってから君の“パパ”はやりたい放題だったみたいだが?」

「な、何よ……バカにしてっ! 社長だからって! 優菜を選ぶくらいだもん、顔だけいいそんな大した人じゃないのね!」


 今までパーティーだからと抑えていた怒りが爆発しそうになる。だって、私が彼に頼んで彼らを招待したのに八尋さんに嫌な思いをさせてしまった。

 ドレスのこともそうだし、顔だけだとか、大したことないだとか他にもたくさん……!私は口を開こうとした時、八尋さんは私の腰を引き寄せると耳元で囁く。

「……優菜ちゃん、俺のために怒ることはないから。大丈夫だよ。今、準備が整ったと連絡が入ったからいつでも合図をして」


 彼に言われて深呼吸をし会場を見渡すと、八尋さんの秘書さんが予定通りに今からすることに会場にいる関係のない方々を案内を完了させてくださっていて残っているのはステージ下にいる愛湖、後ろで慌てた表情をしており逃げ道を探しているのだろう父に自分には関係ないことだと派手な服を着ている継母。
 ステージ上では、私と八尋さん、お義父さま。あとから入って来たのは藤沢家専属弁護士の桜野(おうの)さんだった。

 そして入り口で待機していた警備員の方が静かに扉を閉めた。

 準備は整った。あとは、彼らからお母様から受け継ぐはずだった元々の権利(酒蔵)を取り戻さなくてはいけない。



< 54 / 61 >

この作品をシェア

pagetop