もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜





 北部で戦っているはずの皇太子レオナルド・ジノーヴァーは密かに首都に戻って来ていた。
 もう七回(・・)も北部で戦ってきた彼の実力は、今では他の追随を許さないほどになっていた。

 レオナルドは北部鎮圧を皇帝に報告する前に、一つやるべきことがあった。そのために戦の事後処理は臣下に押し付けて、一人ひっそりと行動していたのだ。

 彼の頭の中は、ある人物でいっぱいだった。

(キアラ・リグリーア伯爵令嬢……)

 忘れもしない、あの女。一度、遠くから見かけたことがある。
 艷やかな漆黒の髪に時折ぎらりと赤く輝く茶色の瞳、氷のような冷ややかな美人だった。

 そして、自分を六回(・・)も破滅させた女……。

 七回目に戻ってきたとき、レオナルドはまずはじめにリグリーア伯爵令嬢を始末しなければと思った。

 あの女が、全ての元凶なのだ。
 あの女さえいなければ。

「キアラ・リグリーア……必ず殺してやる…………!」

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