もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
(マルティーナ……)
愛しい恋人の顔が思い浮かぶ。自分の恋人は婚約者と違って、可愛くて華やかで頭も良くて自分に相応しい令嬢だ。
キアラを処分する頃に彼女に立派な功績を作ってやって、両親から婚約を認めて貰う計画だった。
その計画も、キアラのせいで台無しだ。
あの方の信頼を取り戻し、将来の宰相候補として返り咲くこと。
愛するマルティーナと結婚をすること。
――それが、ダミアーノの最優先すべき課題だった。
皇后陛下への一番の貢献は、皇太子を廃することだ。それはあの方の悲願だからだ。
一気に信頼をマイナスからプラスに取り戻して、もう一度チャンスをいただくには、皇太子を陥れるしかない。
しばらくダミアーノは考え続け、ある結論に辿り着く。
「そうだ……! オレは、被害者だ。不貞の汚らわしい二人に嵌められたのだ……!」
この手は使えると直感的に思った。
皇太子の評判を落とす最良の手――いや、事実だ。
キアラと皇太子は不貞を働き、皇太子は権力を使って下位身分の公爵令息から婚約者を奪った。これは、皇族としてあるまじき卑劣な行為である!
同派閥の貴族たちを動員させて噂を流し……議会まで持って行く。そこで自分は真実を語って皇太子を糾弾。
そして、最終的には廃太子だ。
「ふっ……ふふふ……」
素晴らしい計画だと思った。
いや、これは裁きだ。婚約者がいながら平然と不貞を働くキアラ、そそのかした皇太子。二人に与える天罰なのだ。
ダミアーノはやっと破壊する手を止めた。
そしてメラメラと瞳を赤黒く燃やす。
(キアラ……皇太子……絶対に復讐してやる…………!)