もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「そ……そうですか。それは恐れ入りますわ……」と、キアラは顔を引きつりながら答える。
「髪の色と瞳の色を変えると言われた時は少々残念な気持ちだったが、その焦げ茶色の髪も赤茶色の瞳も美しいな」とレオナルド。
「あ、ありがとうございます……」
キアラはみるみる顔を赤くする。エスコートされている手袋越しの手の平まで熱くなって、レオナルドに伝わってしまうんじゃないかとヒヤヒヤした。
二人は今、皇帝に拝謁するために謁見の間へと向かっていた。婚約の報告のためだ。
期間限定の仮の婚約と言っても、世間には正式な婚約で貫き通している。なので実の父親である皇帝に挨拶をするのは当然の義務だった。
もっとも、皇太子の婚約を皇帝を通さずに勝手に決めた時点で、義務もへったくれもないのだが。
レオナルドはアルヴィーノ侯爵の助言をもとに、今日のための特別なドレスをキアラに贈った。
これもアルヴィーノ侯爵の助言をもとに、自身の瞳の色であるエメラルドグリーンのドレスだ。
さらにアルヴィーノ侯爵の助言をもとに、自然な婚約者同士に見せるために、キアラのことをうんと褒めた。