もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
問題は次の婚約者だった。
皇太子から金も入って家門は潤ったので、次に選ぶ令嬢は持参金など気にせずに選べると思っていた。
なのでマルティーナ・ミア子爵令嬢と婚約したいと父親に訴えたのだが、身分が違いすぎると一蹴されてしまった。
それはただの令息である己には、どうしても覆せない理由だった。
ならば計画を続行するしかなかった。
キアラの代わりに来た令嬢に魅了魔法をかけ、操って、汚れ仕事を全部押し付けて、皇太子を廃太子に持って行く。
皇太子の不貞スキャンダルも握っているので確実に事が進むとは思うが、それでもゴールまでは長い時間がかかるだろう。
早くマルティーナと一緒になりたかった。
もどかしい。じれったい。
ダミアーノは愛しい恋人の涙を優しく拭う。
「必ずティーナと結婚するから。もう少し辛抱してくれ」
「もう少しって、いつよ!」
「なるべく早く君を迎えに行くから。それに、世界で一番ティーナのことを愛しているのは変わらないよ」
「むうぅ……」
マルティーナはぷくりと可愛らしく頬を膨らませる。果実みたいな唇が強調されて吸い付きたくなった。
どうやら機嫌は直ったみたいで、彼は安堵した。
可愛い恋人は元婚約者と違って、素直で感受性豊かで表情がコロコロ変わって、なんて愛らしいのだろう。
「もうっ! 約束よ?」と、彼女は小指を立てて彼に突き出した。
「約束、約束」
彼も小指を絡ませて指切りをする。
そして二言三言、愛を囁いて、キスをして、二人は別れた。