もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜



 ダミアーノが部屋からいなくなると、マルティーナは途端に寂しさを覚える。広い部屋が孤独を促した。

 ここは密会用にダミアーノが用意した場所で、二人の秘密の愛の巣だった。
 彼女は別荘のように自由に使っていて、部屋は自分好みのインテリアで飾り付けられていた。

 それは将来、公爵夫人になった際の予行練習だった。
 結婚して公爵家に住み始めたら、お花がいっぱいでキラキラで華やかなお屋敷にするの。――彼女はよく恋人にそんな話をしていた。

 キアラ・リグリーア伯爵令嬢が婚約解消をして、次は自分がダミアーノの婚約者になるつもりだったのに。

(あの女のせいで、わたしたちの幸せがまた遠のいちゃったわ!)

 マルティーナは心の中でキアラを呪った。思えば最初から大嫌いだった。
 地味な女。ガリガリに痩せていて、令嬢にしてはひょろりと背が高くて。笑っちゃうくらいに惨めそうな女だった。

 なのに、ただ身分が高くて実家に資産があるだけで、公爵令息の婚約者になっちゃって。わたしよりブスのくせに。
 それは彼女の価値観において、許されることではなかった。

 わたしの恋人を盗った泥棒猫。あの女がいるせいで、二人は婚約できなかった。やっといなくなったと思ったら、また邪魔をして。
 きっと、あの女との婚約さえなければ、はじめから自分がダミアーノの婚約者だったに決まってる。
 あの女がいなければ、最初からわたしがダミアンの婚約者だったのに。

 だから、
 絶対に復讐してやるんだから……!
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