もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
(あんな女、不幸になっちゃえばいいのに!)
キアラのことを考えれば考えるほど黒い感情で身体が侵食されていって、腸が煮えくり返りそうだった。
公爵令息との婚約者の座だって子爵家の自分には手に入らないのに、あの女は伯爵家に生まれただけで易々と手に入れて、あまつさえ更に条件のいい皇太子が現れると、すんなり乗り換えるなんて!
(絶対に許さないわ……!)
ダミアーノは皇太子の件で忙しそうだった。彼は自分と結婚するために、今も頑張って動いてくれている。
(……伯爵令嬢のほうはわたしが動かなくっちゃ!)
マルティーナはおもむろに立ち上がって、サイドボードに飾られてある本を一つ押した。
ゴゴゴと静かに低音が響いて、小さな隠し扉が開く。
そこには、ダミアーノが使っている魔女の魔道具が陳列してあった。
彼女は、その中の一つをそっと手に取る。
(これを使って、伯爵令嬢に仕返しをしてあげるわ……!)
殿方であるダミアーノが令嬢に手を出すのは、限界があると思った。
やっぱり、女の敵は女なのだ。
同じ女である自分が始末をしなければ。
「見てなさい! 今度のお茶会であの女に恥をかかせてやるんだから!」