もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

24 噂とスキャンダル

 キアラとレオナルドの不貞の噂が、凄まじい勢いで社交界へ広がっていった。それは、令嬢にとって不名誉な尾ひれまで付いて。
 ある程度は予想はしていたものの、集団ヒステリーのような暴発的な膨らみは、明らかに誰かの陰謀によるものだった。

 レオナルドは婚約解消の際にヴィッツィオ公爵家と契約書を交わしていた。
 その項目には「今後は婚約解消について一切言及しない」「不名誉な噂を流さない」……なども盛り込まれてあった。それを破ったら、莫大な賠償金を請求する、と。

 その件をダミアーノが知らないはずはないが、現に噂は広まっている。
 となれば、公爵家より身分が上の者が仕掛けているのだろう。
 そんな人物は、一人しかいない。

 噂を広げている貴族たちは、次の議会で皇太子の資質について問うつもりのようだ。
 英雄である皇太子が公爵令息の婚約者を無慈悲に奪い、あまつさえ婚約前に純潔を奪った……という大スキャンダルは、敵対派閥にとって打ってつけの攻撃材料だった。


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