もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「そうだわっ……お金よっ!」
ガタリと音を立てて、椅子から乱暴に立ち上がる。全身に電撃が走ったみたいにビリビリと痺れて、たちまち身体の芯から熱くなった。
胸の鼓動が、どんどん速くなる。
やっと明るい未来が見えてきそうな気がした。
過去の人生では、買収で他人を動かすことができた。
ダミアーノの工作で逆に陥れられたことばかりだったが、キアラ自身も賄賂で他人を動かすこと多かったのだ。……もっとも、全てダミアーノの命令の遂行のためだが。
そして人間は金で動く。動かせるのだ。
身分の低い者は生きるために、貴族たちはさらなる贅沢のために。
まれにどんなに金を積んでもどうにもできない高潔な人間もいるが、大体は賄賂で解決できた。
――きっと、婚約破棄も!
キアラはヴィッツィオ家が贅沢を好むことを知っていた。
家門の品位を守るためなどという馬鹿馬鹿しい理由で散財を重ねて、潤沢なお金はあっても全然足りない。
だからこそ、広大な領地と事業の成功で財の多いリグリーア伯爵家の娘と婚約したのだ。