もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
(……やっぱり)
下世話な噂の中心には、案の定マルティーナ・ミア子爵令嬢がいたのだった。
彼女は令嬢たちのコミュニティ――特に、下位貴族の間で存在感が強かった。
可憐な容姿で令息たちからの人気が高く、高位貴族の令息たちとの繋がりを持とうという打算的な関係ではあるが。
(ま、それもすぐに覆るけどね)
キアラは気にする素振りも見せずに、堂々と彼女たちの前を通り過ぎる。醜い噂話などどこ吹く風で。
令嬢たちの双眸には悔しさや羨望も混じっていて、思わず笑いそうになった。
皇后は「たった一言から始まって国が傾くこともある」と言っていた。
だが、所詮は「噂」に過ぎないのだ。
例えば社交界にもっと強烈なスキャンダルが巻き起こったら、人々は掌を返したようにそちらに夢中になるだろう。
今日はリグリーア伯爵令嬢にとって、皇太子との婚約を発表してから初めての公の場だった。
妙な噂が広まっている今、一人だと危ないのではと何度もレオナルドが不参加を促したが、キアラは頑なに首を縦に振らなかった。
ここで逃げたら不名誉な噂を認めたことになるし、なにより噂の元凶の一部である令嬢に仕返しをしたかったのだ。
それに、今日のお茶会の真の目的は――……、