もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「きゃあっ! 第二皇子殿下がいらしたわよ!」
「今日も素敵だわ!」
「かっこいい〜」
令嬢たちの黄色い声が一斉に上がる。彼女たちの視線は、ある殿方へ一直線だった。
その人物はスラリとした細身の体躯で、整った顔立ちをしていた。
オレンジ味のある金髪に、南方の海を思わせる青緑の瞳。堂々としているが美しい所作は、絵本に出てきそうな王子様そのままの姿だった。
彼は、皇后ヴィットリーアの嫡子――第二皇子アンドレアである。
今日のお茶会は皇子の婚約者探しも兼ねていた。アンドレアは既に多くの浮名を流しているが、まだ婚約者は決まっていなかったのだ。
実のところは、皇后が適切ないくつかの家門から息子の婚約者候補を挙げているのだが、未来の皇帝の妻として相応しいかを見極めるために、こういったお見合いの場を定期的に設けているのだった。
「やぁ、待たせたね」
彼は笑顔を振りまきながら令嬢たちに手を振る。途端に波のように令嬢たちがざわめいた。彼女たちは皇子に顔を認められたいと、押し合いながら前へと進む。
キアラは壁際でお菓子をぱくつきながら、作られた舞台みたいな滑稽な様子を冷めた目で見る。
(同じ皇帝の血を引いているのに、兄弟は全然似てないわね)
兄であるレオナルドが男らしいと形容すれば、弟の第二皇子は少し中性的な美形と言ったところだ。彼の親しみやすい性格も加えて、世間知らずの令嬢たちからはアンドレアのほうが人気が高かった。
単に兄のほうは軍の生活が長く、剣も魔法も飛び抜けて実力が高いので恐れられているのもあるが。
第二皇子は顔の系統がどことなくダミアーノに似ている気がして、キアラはちょっと気分が悪くなった。